結論:UAEでは非課税、日本では課税される
まず全体像です。ドバイ不動産を売却したときの税金は、UAE側と日本側で完全に分けて考えます。
| 項目 | UAE(ドバイ) | 日本(居住者の場合) |
|---|---|---|
| 売却益への課税 | なし(個人の不動産譲渡益に対する所得税・譲渡所得税は課されません) | あり。譲渡所得として申告分離課税 |
| 税率 | — | 短期 39.63%/長期 20.315% |
| 売却時の実費 | 仲介手数料(一般に売買価格の2%+VAT)、デベロッパーのNOC発行費用、住宅ローンがある場合は抹消費用など | — |
| 申告 | 不要 | 確定申告が必要(翌年2月16日〜3月15日) |
つまり「ドバイは無税だから何もしなくていい」という理解は、日本に住んでいる方にとっては誤りです。日本の居住者は全世界の所得が課税対象になるため、ドバイで出た売却益も日本で申告します。
税率は「売った年の1月1日時点で5年を超えているか」で決まる
日本の譲渡所得は、保有期間によって税率が大きく変わります。
| 区分 | 保有期間 | 税率(所得税+復興特別所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税30.63%+住民税9%) |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
譲渡所得の計算式
課税される金額は、売った金額そのものではありません。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費に入るもの
- 物件の購入代金(建物部分は保有期間に応じた減価償却費を差し引いた後の金額)
- 購入時のDLD(ドバイ土地局)登録手数料 ― 物件価格の4%+登録事務手数料
- 購入時の仲介手数料
- オフプランのOqood登録費用、名義変更手数料など購入に直接かかった費用
譲渡費用に入るもの
- 売却時の仲介手数料(一般に2%+VAT)
- デベロッパーのNOC(No Objection Certificate)発行費用
- 売却のために直接要した費用
最大の落とし穴:円換算で「儲かっていないのに課税される」
ここが日本人オーナーがもっとも見落とすポイントです。ドバイの取引はAED(ディルハム)建てですが、日本の申告は円で行います。
- 取得費 ― 取得した日(取引の日)のTTM(対顧客電信売買相場の仲値)で円換算するのが原則
- 譲渡収入 ― 譲渡すべき日(通常は引渡し日)のTTMで円換算
AEDは米ドルにペッグされているため、円安が進むとAED建てで同額でも円建てでは値上がりしたことになります。なお、オフプランのように代金を数年にわたって分割で支払った場合、どの時点のレートで取得費を換算するかは個別の事情によって判断が分かれます。支払いの都度、日付・金額・その日のレートがわかる記録を残しておいてください。
数値例
| 時点 | AED | 為替(参考) | 円換算 |
|---|---|---|---|
| 購入 | 1,500,000 AED | 1AED=30円 | 45,000,000円 |
| 売却 | 1,500,000 AED | 1AED=43円 | 64,500,000円 |
| 差額 | 0 AED | — | +19,500,000円 |
AED建てでは1ディルハムも儲かっていないのに、円換算では約1,950万円の譲渡益が出ている計算になります(実際には取得費・譲渡費用を差し引きます)。この為替による利益も日本では課税対象です。逆に円高に振れた局面では、AED建てで利益が出ていても円換算では損失になることがあります。
外国税額控除は、基本的に使えない
海外で納めた税金を日本の税額から差し引く「外国税額控除」という制度があります。ただし、UAEには個人の不動産譲渡益に対する課税がないため、控除する外国税額がそもそも発生しません。二重課税にならない代わりに、日本の税金はそのまま満額かかる、と理解しておくのが正確です。
忘れやすい2つの調書
国外財産調書
その年の12月31日時点で、国外にある財産の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する義務があります。ドバイの不動産はここに含まれます。売却した年だけでなく、保有している間も毎年の判定が必要です。
財産債務調書
所得金額が2,000万円超かつ一定の財産基準を満たす場合などに提出が必要になります。譲渡所得が大きく出た年は、この基準に引っかかることがあります。
「非居住者になってから売る」は慎重に
日本の非居住者になれば日本での譲渡所得課税を受けない、という発想は出てきますが、実務上は簡単ではありません。
- 居住者・非居住者の判定は住民票の有無だけでは決まらず、住居・職業・家族の居住地・資産の所在などを総合して実質で判断されます
- 出国の時期と売却の時期が近いと、租税回避として否認されるリスクがあります
- 一定の有価証券等については出国時に含み益へ課税する制度(国外転出時課税)があります
実際にドバイへ移住したうえで数年間生活の本拠を置く、という実態があるかどうかが分かれ目です。売却前に必ず国際税務に強い税理士へ相談してください。
売却の実務フロー(ドバイ側)
- 仲介を選定し、価格とマーケティング方針を決める(当社は現地ブローカーとして売却のみのご依頼も承ります)
- 買主が決まったらMOU(Form F)を締結し、通常は売買価格の10%を保証小切手で預託
- デベロッパーからNOC(異議なし証明)を取得。未払いのサービスチャージがあれば清算
- 住宅ローンがある場合は抹消手続き
- DLDのトラスティーオフィスで名義移転。売却代金はマネージャーズチェックで受領するのが一般的
- 受領した資金を日本または他国へ送金。送金元の資金origin(出所)を説明できる書類を揃える
- 翌年、日本で確定申告
まとめ
- UAEに売却益への課税はないが、日本の居住者は日本で申告・納税が必要
- 税率は売却した年の1月1日時点で5年超かどうかで39.63%/20.315%に分かれる
- 円換算のルール上、AED建てで利益が出ていなくても課税所得が出ることがある
- 購入時の契約書・送金記録は取得費の証明として必ず保管する
- 国外財産調書(12月31日時点で5,000万円超)の提出も忘れない
よくある質問
はい。UAEには個人の不動産譲渡益に対する所得税・譲渡所得税がありません。ただし売却時の仲介手数料(一般に2%+VAT)やデベロッパーのNOC発行費用といった実費はかかります。また、日本に住んでいる方は日本側で譲渡所得として課税されます。
売却した年の1月1日時点で保有期間が5年を超えているかどうかで判定します。取得日から5年後の応当日ではありません。判定を1年ずらすだけで税率が39.63%から20.315%に変わるため、売却時期は事前に確認してください。
あります。取得費は購入代金を支払った日のTTM、譲渡収入は譲渡した日のTTMで円換算するため、円安が進んでいるとAED建てで同額でも円換算では利益が出ます。この為替による差額も課税対象です。
取得費を証明できない場合、原則として譲渡収入金額の5%を取得費とみなして計算します。実際の取得費より大幅に小さくなることが多く、納税額が大きく増えます。売買契約書(SPA)、DLDの登録証明、送金明細は必ず保管してください。
いいえ。毎年12月31日時点で国外財産の合計が5,000万円を超えていれば、売却の有無にかかわらず翌年6月30日までに提出が必要です。ドバイの不動産は国外財産に含まれます。
居住者・非居住者の判定は住民票の有無だけでは決まらず、生活の本拠がどこにあるかを実質で判断します。出国と売却の時期が近い場合は否認されるリスクもあります。移住を前提に検討される場合は、売却前に国際税務に強い税理士へご相談ください。
可能です。当社はドバイのRERA登録ブローカーとして、売却のみのご依頼も承っています。価格査定、買主の募集、NOC取得、DLDでの名義移転、売却代金の受領と送金まで日本語で対応します。

