2026年9月30日(水)、UAEの国営鉄道エティハド鉄道(Etihad Rail)の旅客列車が、ドバイ〜アブダビ間で運行を始めました。初列車は午前6時14分、ドバイのAl Yalayis駅からアブダビへ向けて出発しました。
これまでUAEの都市間移動は、ほぼ車とバスに頼ってきました。そこに首長国どうしを約1時間で結ぶ鉄道が加わったことは、暮らし方や働き方、旅行の仕方、さらには住む場所の選び方まで変えうる出来事です。本記事では、今日開業した区間の運賃・時刻表だけでなく、エティハド鉄道とはどんな鉄道か、どこに駅があり、これからどうなるのかを、歴史と今後の計画を含めて詳しく解説します。
エティハド鉄道とは|UAE全土を結ぶ国営鉄道
エティハド鉄道は、UAE(アラブ首長国連邦)の国営鉄道会社であり、同社が整備する全国鉄道網の名前でもあります。2009年に連邦法(2009年第2号)にもとづいて設立され、アブダビに本社を置き、ディヤーブ・ビン・ムハンマド・ビン・ザーイド殿下が会長を務めています。
もともとは貨物鉄道として建設が始まり、港や工業地帯、サウジアラビア国境を結ぶ物流の大動脈として使われてきました。その同じ線路の上に、2026年から旅客列車が走り始めたというのが今回の流れです。
| 設立 | 2009年(連邦法2009年第2号) |
|---|---|
| 路線網 | 約900km(将来は約1,200km) |
| 旅客列車 | 最高時速200km、1編成あたり約400人 |
| 旅客駅 | 11都市・地域(アブダビ・ドバイ・シャルジャ・フジャイラの4首長国) |
| 旅客数の見通し | 年間約1,000万人が目標。2030年に年間3,650万人に達するとの見通しも |
これまでの歩み|貨物鉄道から旅客鉄道へ
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2009年6月 | 連邦法にもとづきエティハド鉄道を設立 |
| 2016年1月 | 第1期(264km)が開業。内陸のShah・Habshanのガス施設からRuwais港まで、ADNOC向けに粒状硫黄を運搬(1日最大2万2,000トン) |
| 2023年2月 | 第2期(605km)が完成。サウジ国境のGhuwaifatから東海岸のフジャイラまでがつながり、路線網は約900kmに |
| 2026年6月30日 | 旅客列車が運行開始(アブダビ〜フジャイラ)。運行前に1万枚以上のチケットが売れる |
| 2026年9月30日 | ドバイ(Al Yalayis駅)とシャルジャのAl Dhaid駅が開業。ドバイ〜アブダビ間の運行が始まる |
出典:Wikipedia「Etihad Rail」、The National(2026年9月28日)。
第1期の開業から旅客列車の運行まで約10年。貨物で実績を積み、サウジ国境からフジャイラまでの本線(第2期)が完成してから旅客に広げるという、段階を踏んだ進め方がとられてきました。
本日開業:ドバイ〜アブダビ線の運賃・時刻表
開業にあわせて、ドバイ側の駅ではハムダン・ドバイ皇太子とディヤーブ殿下が開業式典を行い、ムハンマド・ビン・ザーイド大統領はアブダビ発の記念列車でドバイ入りしました。
| 区間 | ドバイ(Al Yalayis駅)〜アブダビ(Mohamed Bin Zayed City駅) |
|---|---|
| 所要時間 | 約1時間(報道では57〜64分) |
| 本数 | 1日5往復 |
| 運賃 | Comfortクラス 39ディルハム〜(約1,700円〜)/Premiumクラス 109ディルハム〜(約4,700円〜) |
| 運賃タイプ | Saver(払い戻し不可・座席指定なし)/Value(変更可)/Flex(払い戻しを含め柔軟) |
| 予約 | 公式サイト(etihadrail.ae)・公式アプリ・駅の券売機。発車5分前まで購入可。ドバイの交通系IC「Nol」と連携し、1つのQRコードで鉄道・メトロ・トラム・バスを利用可能 |
| 便 | ドバイ発 | アブダビ発 |
|---|---|---|
| 第1便 | 6:14 | 6:43 |
| 第2便 | 7:14 | 7:43 |
| 第3便 | 13:14 | 12:43 |
| 第4便 | 17:14 | 16:43 |
| 第5便 | 18:14 | 17:43 |
出発時刻(開業時点)。出典:Gulf News(2026年9月)。時刻は変更される場合があります。
朝6時台・7時台の便は、ドバイからアブダビへの通勤にも使える時間帯です。一方、日中は本数が少ないため、帰りの便も含めて事前に予約しておくと安心です。
駅はどこにある?|全11駅と開業時期
旅客駅は11の都市・地域に置かれ、そのうち7駅がアブダビ首長国にあります。広いアブダビ首長国の西部(アル・ダフラ地域)にも駅が並ぶのが特徴です。
| 駅 | 首長国・地域 | 開業 |
|---|---|---|
| Mohamed Bin Zayed City | アブダビ(Dalma Mall向かい) | 開業済み(2026年6月30日) |
| Al Hilal(Madinat Al Hilal) | フジャイラ | 開業済み(2026年6月30日) |
| Jumeirah Golf Estates(Al Yalayis) | ドバイ | 開業済み(2026年9月30日) |
| Al Dhaid | シャルジャ | 開業済み(2026年9月30日) |
| Madinat Zayed | アブダビ(アル・ダフラ) | 2026年11月30日予定 |
| Mezairaa | アブダビ(アル・ダフラ/リワ地域) | 2026年11月30日予定(「リワ」として発表) |
| Al Sila | アブダビ(アル・ダフラ) | 2026年12月30日予定 |
| Al Dhannah | アブダビ(アル・ダフラ) | 2026年12月30日予定 |
| Al Mirfa | アブダビ(アル・ダフラ) | 2026年12月30日予定 |
| University City | シャルジャ | 2027年3月30日予定 |
| Al Faya | アブダビ | 未発表 |
出典:Gulf News(2026年1月・4月更新)、The National(2026年9月28日)。開業日は変更される場合があります。
ドバイ:Al Yalayis駅へのアクセス
- メトロ:レッドラインのJumeirah Golf Estates駅と、長さ400mの屋根付き歩道橋でつながっています(徒歩約5分)。2032年開業予定のゴールドラインとも接続する計画です
- バス:F38系統が駅周辺を走り、Dubai Production City・Dubai Sports Cityと結んでいます
- 車:有料駐車場265台(うちEV用5台)
- 駅の設備:Wi-Fi、待合室(ファミリー向け待合室を含む)、救護室、券売機、カフェ・売店(Starbucks、WHSmithなど)
アブダビ:Mohamed Bin Zayed City駅からの移動
Dalma Mallの向かい、Mussafahバスステーションの隣にあり、アブダビの中心部ではありません。市内へはAD MobilityのMR1・MR2系統のバスでメインバスステーションやAl Zahiyahへ向かうほか、エティハド鉄道のシャトルバス(1回10ディルハム)やタクシーを使います。所要時間は、列車の約1時間に駅からの移動を足して考えましょう。
首長国がつながると何が変わるか
UAEは7つの首長国からなる連邦ですが、首長国をまたぐ移動は、これまで車かバスが中心でした。鉄道が加わったことで、「首長国をまたぐ移動」が日常的な選択肢になりつつあります。報道されている主な区間の所要時間は次のとおりです。
| 区間 | 所要時間 | 運賃(Comfort〜) |
|---|---|---|
| ドバイ〜アブダビ | 約1時間 | 39ディルハム |
| ドバイ〜フジャイラ | 約70分 | 29ディルハム |
| アブダビ〜フジャイラ | 約105分 | — |
| アブダビ〜ルワイス | 約70分 | — |
| Al Dhaid(シャルジャ)〜アブダビ | 約84分 | 59ディルハム |
| Al Dhaid〜フジャイラ | 約25分 | 19ディルハム(朝) |
出典:The National(2026年9月28日)、Gulf News(2026年1月)。「—」は運賃未確認。ドバイ〜フジャイラはドバイ発11:54・フジャイラ発13:57。
- 2都市にまたがる暮らしと仕事:ドバイに住んでアブダビで働く、あるいはその逆が、車に頼らずに現実的になります。朝6時台・7時台の便は通勤に使える時間帯です
- 週末の小旅行:ドバイから東海岸のフジャイラへ約70分・29ディルハムから。山と海に囲まれた東海岸へ鉄道で行けるようになりました(現在はドバイ発11:54・フジャイラ発13:57のため、日帰りは時刻表を確認して計画を)
- 西部地域へのアクセス:アブダビから産業都市ルワイスまで約70分。今後はリワなどアル・ダフラ地域の駅も開業し、広い国土の西側にも鉄道で行けるようになります
- 乗り換えのしやすさ:ドバイではNolと連携し、1つのQRコードで鉄道からメトロ・トラム・バスへ乗り継げます
| 手段 | 運賃 | 所要時間 |
|---|---|---|
| エティハド鉄道(Comfort) | 39ディルハム〜 | 約1時間+駅への移動 |
| 路線バス(Ibn Battuta → Abu Dhabi Central) | 25ディルハム | 約105分 |
| タクシー | 330〜420ディルハム程度 | — |
ドバイ〜アブダビ間の比較。出典:The National(2026年9月30日)。
鉄道はバスより14ディルハム高いものの、乗車時間は40分以上短く、タクシーと比べると運賃は10分の1前後です。駅の近くに住んでいる方や、駅から目的地までが近い方ほどメリットが大きくなります。
これからどうなる?|高速鉄道・オマーン線・GCC鉄道
国内:駅の追加と北部首長国
2026年11月30日にMadinat Zayed・リワ、12月30日にAl Sila・Al Dhannah・Al Mirfa、2027年3月30日にシャルジャのUniversity City駅が開業予定です。さらに、ドバイから北部首長国(ラス・アル・ハイマやフジャイラ方面)へ延びる第3期(279km)の構想もありますが、時期はまだ示されていません。
高速鉄道:アブダビ〜ドバイを約30分で
今日開業した路線とは別に、アブダビ〜ドバイ間に最高時速350km、所要約30分の高速鉄道(約150km)の計画があり、2030年の完成を目指しています。報道では、年間最大2,100万人の利用と、50年間で1,450億ディルハムのGDP押し上げ効果が見込まれています。
オマーン線「Hafeet Rail」:アルアインからソハールへ
UAEとオマーンの合弁によるHafeet Rail(約238km、総事業費25億ドル)は、オマーンのソハールとUAEの鉄道網を、ブライミ・アルアイン経由で結ぶ計画です。2026年4月時点で工事は約40%まで進み、9月にはオマーン側で協定が批准されました。旅客列車は最高時速200kmで、ソハール〜アブダビ約100分、ソハール〜アルアイン約47分と発表されています。
GCC鉄道:湾岸6か国を結ぶ構想
エティハド鉄道はサウジアラビア国境のGhuwaifatまで延びており、湾岸協力会議(GCC)6か国を鉄道で結ぶGCC鉄道の一部を担います。湾岸鉄道庁は、2030年12月の完成を目標としています。将来は鉄道でサウジアラビアやオマーンへ行ける時代も視野に入ってきました。
期待される効果と可能性
エティハド鉄道側が示してきた試算では、鉄道網は経済と環境に次のような効果をもたらすとされています。いずれも長期の見通しで、実現を約束するものではありません。
- 40年間で1,860億ディルハムの経済効果
- CO2排出を年間220万トン以上削減(道路から最大37万5,000台の車が減るのに相当)
- 40年間で210億ディルハムの観光収入
- 50年間で230億ディルハムの地価上昇効果
数字以上に大きいのは、首長国ごとに分かれていた生活圏が、ひとつの国としてつながっていくことかもしれません。住む場所・働く場所・遊びに行く場所を、首長国の境を越えて選びやすくなることは、UAEで暮らす人にとっても、これから移住や投資を考える人にとっても大きな変化です。
不動産の視点:駅の周辺をどう見るか
ドバイ側のAl Yalayis駅は、Jumeirah Golf Estatesの隣にあり、メトロのレッドラインと歩道橋でつながり、バスでDubai Sports CityやDubai Production Cityとも結ばれています。アブダビ側も含め、駅にアクセスしやすいエリアは、2都市にまたがって暮らす人にとって選択肢になりえます。
ただし、駅ができたことだけで物件価格が上がると考えるのは早計です。現在は1日5往復と本数が限られ、アブダビ側の駅は中心部から離れています。本数の増加、駅から目的地までの乗り換え、将来の高速鉄道のルートなど、実際の使い勝手を確かめたうえで判断することが大切です。
駅周辺エリアの物件比較や、ドバイとアブダビのどちらに住むかのご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。
よくあるご質問
エティハド鉄道とは何ですか?
2009年に設立されたUAEの国営鉄道会社と、その全国鉄道網です。貨物鉄道として始まり、2026年6月から旅客列車も走っています。路線網は約900kmで、将来は約1,200kmに広がる計画です。
ドバイ〜アブダビの運賃と所要時間は?
Comfortクラスが39ディルハムから、Premiumクラスが109ディルハムからで、所要は約1時間(報道では57〜64分)です。1日5往復運行しています(開業時点)。
駅はどこにありますか?
アブダビのMohamed Bin Zayed City、フジャイラのAl Hilal、ドバイのJumeirah Golf Estates(Al Yalayis)、シャルジャのAl Dhaidが開業済みです。アル・ダフラ地域の各駅とシャルジャのUniversity Cityは2026年11月〜2027年3月に開業予定です。Al Faya(アブダビ)の開業時期は未発表で、全部で11都市・地域に駅が置かれます。
チケットはどこで買えますか?
公式サイト(etihadrail.ae)、公式アプリ、駅の券売機で購入でき、発車5分前まで買えます。ドバイのNolとも連携しています。
将来はどこまで行けるようになりますか?
国内ではアル・ダフラ地域やシャルジャのUniversity Cityに駅が増えるほか、アブダビ〜ドバイを約30分で結ぶ高速鉄道(2030年目標)、アルアイン経由でオマーンのソハールへ向かうHafeet Rail、湾岸6か国を結ぶGCC鉄道(2030年12月目標)が計画・建設中です。
駅の近くの物件は値上がりしますか?
駅ができたことだけで値上がりするとは限りません。本数や乗り換え、将来の路線計画など実際の使い勝手を確かめたうえで判断することをおすすめします。物件ごとの比較はお気軽にご相談ください。
本記事は、2026年9月30日時点の報道(The National 2026年9月28日・30日、Gulf News 2026年1月〜9月)、エティハド鉄道の公式サイト(etihadrail.ae)、Wikipedia「Etihad Rail」をもとにまとめたものです。経済効果などの数値は発表時点の試算・見通しです。時刻・運賃・開業日は変更される場合があるため、ご乗車前に公式サイトでご確認ください。円換算は1ディルハム=約43円の目安です。

