記事の目次
はじめに
ドバイの賃貸も、世界の他の大都市と同じように、大家さんと借主の間でときどきトラブルが起きることがあります。
しかし、ドバイの特徴は、こうした関係をしっかり規制し、両者の権利を守る明確で公平な法律システムがあることです。
この記事では、多くの人が知らない重要な法律をわかりやすく解説し、借主がよく直面するトラブルでどのような対応ができるのかを分かりやすく解説します。
家賃の値上げ:合法性の条件とは?

大家から家賃を値上げしたいと言われても、その値上げが必ずしも合法とは限りません。
ドバイの法律では、家賃値上げは明確な条件のもとでしか認められておらず、これらの条件を満たさない値上げは違法とされます。
一番重要な条件は、値上げがドバイ土地局(Dubai Land Department)が発表する公式の賃貸インデックス(Smart Rental Index)に基づいていることです。
Dubai Land Department – Rental Index
このインデックスは、現在支払っている家賃と、同じエリア・同じ物件タイプの平均賃料を比較して算出されます。
借主は自分の物件情報をインデックスに入力すれば、正しい家賃額や許容される値上げ額(もしあれば)がすぐに確認できます。
許容される値上げ率
値上げ率は、現在の家賃と市場平均との差によって決まります。
現在の家賃が市場平均に近い、またはわずかに低い程度であれば、値上げはできません。
家賃と市場平均の差が大きいほど、許容される値上げ率は段階的に高くなりますが、法律で定められた上限を超えることはできません。
賃貸インデックスで決められた割合を超える値上げは、違反行為であり違法となります。
基本ルール
現在の家賃が市場平均より大きく低いほど、
法律で認められる家賃の増額率は高くなります。
(ABD Advocates)
法律で認められている家賃の増額率
現在の家賃と市場平均家賃との差 によって、上限が決まっています。

また、Rental Index(Dubai Land Department – Rental Index ) に物件情報を入力するだけで、
賃料の増額が可能かどうか、および その増額率 が自動的に表示されます。
自分で計算する必要はありません。
例を見てみましょう。
下の画像に示されているとおり、ある賃貸物件の賃貸契約情報を入力した結果、
家賃は10%まで増額可能 であることが確認できます。

10%以上の値上げを要求してきた場合は拒否することができます。
もう一つの例を見てみましょう。
下の画像に示されているとおりです。

こちらの賃貸物件では No Increase (値上げなし)と表示されています。
家賃の値上げは一切行われないと明確に記載されているにもかかわらず、値上げを要求してきた場合は拒否することができます。
家賃値上げ前の通知義務

たとえ値上げ率が法律に適合だとしても、大家さんが値上げを適用できるのは、契約終了の少なくとも90日前に借主に対して書面で通知した場合だけです。
この90日前の通知義務を守らなかった場合、大家さんの値上げ権利は失われ、契約更新時には家賃が従来どおり据え置きとなります。
大家さんが退去を求められるのはどんな場合?

家主が物件の退去を求められるのは、限られた法的なケースのみです。正当な法的理由なく入居者を退去させることはできません。
代表的な理由の一つが、大家自身、または両親・配偶者・子どもなどの親族が自己居住を目的として物件を使用する場合です。この場合、適切な代替物件が存在しないことを証明する必要があります。
また、必要な許可を取得したうえでの建物の取り壊しや再建築、もしくは借主が居住したままでは実施できない大規模な修繕が必要な場合も、認定された技術報告書があることを条件に退去が認められます。
さらに、一定のルールを満たしたうえでの物件売却も、合法的な退去理由の一つです。
または、家賃を支払わない場合、貸主の許可なく転貸している場合、違法または契約外の目的で物件を使用している場合、物件に重大な損害を与えた場合、または契約内容や公序良俗に反する使い方をしている場合には、貸主は借主を退去させることができます。
ただし、その場合でも、まず正式な法的通知を出す必要があり、借主が期限内に是正しない場合に限り、賃貸紛争解決センター(RDC)を通じて手続きを進めることになります。
一方で、家賃を上げたいから、借主が気に入らないから、より高い家賃を払う別の借主が見つかったからといった理由だけで、退去させることは認められていません。
また、たとえ法的に正当な退去理由がある場合でも、貸主が鍵を交換したり、電気や水道を止めたり、家財を勝手に撤去したりすることはできず、退去の強制執行は当局のみが行うことができます。
大家さんが「自分で住む」と言って退去を求めたのに、実際には住まなかったら?
一部のケースでは、大家さんが個人居住を理由に借主を退去させた後、実際にその物件に住まずにいることがあります。
ドバイの法律はこの点について明確です。
大家さんが退去後に物件に住んでいないことが証明された場合、またはすぐに他人に貸し出したり、売却したりした場合、その退去は違法かつ不当なものと判断されます。
このような場合、元の借主は正式な苦情を申し立て、退去理由が虚偽であったことを立証する権利があります。
その結果、大家さんに借主への補償を義務づけ、法的費用や手数料を負担させる可能性があります。
大家さんが実際に住むべき期間
実務上、自己居住を理由に借主を退去させた大家は、通常2年以上、実際にその物件に居住することが求められます。
この期間中に第三者へ貸し出すことは認められていません。
これに反する行為は、悪意の証拠と見なされる可能性があります。
退去を求めるための法的手続き
退去を合法とするためには、大家さんは借主に対して公証人経由または書留郵便で正式な通知を送らなければなりません。この通知はアラビア語で作成する必要があります。
また、この通知は契約終了の少なくとも12ヶ月前に行わなければなりません。
法律は不当な退去を禁じており、明確で証明可能な法的理由がない限り、借主を退去させることはできません。
大家さんが違法な家賃値上げを強行してきたらどうする?
貸主が法律に反する家賃の値上げを要求し、入居者がそれを拒否した場合、
入居者は貸主の同意がなくても、直接 Rental Dispute Settlement Centre(RDC) に手続きを進めることができます。
フェーズ1
この段階では、オファー&デポジット(供託)申請を行います。
これはEjari更新に近い手続きで、以下の書類を提出します。
既存の賃貸契約書、現在のEjari、エミレーツID、パスポートコピー、
そして法的に認められた家賃額のみで作成した新しい家賃小切手のコピーです。
家賃の小切手については、
貸主に渡すのではなく、署名済みの原本小切手をRDCに供託します。
RDCは支払い意思の証拠として原本を保管し、コピーは申請書類の一部として扱われます。
この手続きが完了すると、
貸主が協力しなくても、RDCが入居者に代わってEjariを更新・登録することが可能です。
このフェーズの費用は、約700AED(為替にもよりますが約28,000〜30,000円)です。
フェーズ2:友好的解決(調停・メディエーション)
(年間家賃の約3%)
オファー&デポジット後も貸主が異議を唱え続ける場合、
RDCは通常、裁判に進む前に友好的解決(調停)フェーズへ移行します。
このフェーズでは、RDCが中立的な調停者として介入し、
貸主への正式通知、書類確認、RERAレントインデックスの検証を行ったうえで、
裁判官の判断を介さずに解決を図ることを目的とします。
この段階の目的は、
できるだけ早期に解決し、本格的な裁判を避けることです。
費用は年間家賃額の約3%で、
フェーズ1の700AEDとは別途発生しますが、
裁判費用と比べると大幅に低額です。
この段階で貸主が合意すれば、
裁判に進むことなく、正当な家賃額が確定し、手続きは終了します。
フェーズ3:RDC裁判(正式な訴訟手続き)
調停フェーズでも貸主が応じない場合、
案件は正式なRDC裁判(訴訟手続き)へと進みます。
このフェーズでは裁判官による判断が行われ、
費用は通常約10,000AED(約40万円前後)かかります。
ただし、入居者が勝訴した場合、この裁判費用は返金されるのが一般的で、
裁判所がRERAレンタルインデックスに基づいた正当な家賃額を正式に確定します。
実務上は、書類が整っており、
値上げが明確に違法である場合、
入居者側に有利な判断が下されるケースが多いのが現状です。
まとめ

ドバイの法律は、大家さんと借主の関係をバランスよく規制しています。
家賃の値上げや退去は法律で認められていますが、明確な条件と手続きを守る必要があります。
双方がこれらのルールを守ることで、トラブルが減り、より安定した公平な関係が築けます。
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